古いガラスの記憶#7 東京駒宮商会 八角神薬

私はあまり神薬へのこだわりは無いのだけれど、それでもこれは手にしてとても嬉しかったし、いつもデスク際に飾っているくらいには好きな瓶だ。きっちりとした書体に深いコバルトブルー、コルク栓使用でありながらエッジの立った八角形。そして、自分のハケ読みで掘り出せた事もあり、とても思い入れのある瓶なのです。

深いコバルトブルーは、不思議な青い光を出しているようにも見える。

この瓶は、現在の自分のスタイル・・・「ハケの全容を把握していく掘り」での発掘品。時間が限られているタイプのディガーはどうしてもハケの豊かな棚を追う癖があり、一部の著名なディガーの方々のように、「ハケを全て掘りつくす前提での掘り」をしない傾向があるが、それは大変な損なのだ。

というのは、「ハケの際」には無傷の良い瓶や大瓶が転がり、その上から土をかぶせられることがままあるため、ハケの際や端ではない部分から良い棚を追っていくと、数多い出土品に目が行って、このようなお宝を逃してしまう事がしばしば起きてしまうのだ。

そして、この神薬はしばらく何もない所を延々と掘り続け、やっと到達したハケの際からポロっと転がり出てきた。推測と努力が報われた瞬間である。さらに言うなら、この八角神薬はおそらくわざわざ東京で買い求められたものなのだ。ハケ自体が配置薬ハケではなく、通常の神薬も無ければ、その他の配置薬もほぼ無いハケであり、そして東京駒宮商会のエンボス。当時の誰かが上京してわざわざ買い求め、そして捨てた、おそらくただ一つの神薬を拾えたという事になる。

品と威厳と深み・・・。

この神薬はボトルディガーとしての自分の道しるべであると同時に、大事なベンチマークにもなっている。当時、「一番最初に手にした神薬がよりによって八角神薬かい!」と驚愕したものだが、この瓶がディガーとしての私の背中を押したり、趣味とは少しずれた価値観を持つ人々(要するに人気の古ガラスのレア度とかでマウント取ろうとする残念な人々)に対してのお守りのような効果を発揮したりと、さすがに「神薬だなぁ」と感心する事になった。

コバルト色のお気に入りの瓶と並んで、どこか瓶神様の意志を感じる瓶である。神薬、特に八角神薬は、何かが宿りやすいのかもしれない。

「駒宮商会」のエンボスは、神薬のエンボスの真後ろではなく、ややズレた面にエンボスされている。

実際、ネットで多くの先達やディガーの方々を見ていると、どうも八角新薬は瓶神様の免許か何かのようで、手にしている人々は発掘品も一味違うイメージだ。私もなんだか妙に珍しい瓶を手にさせていただいており、デスク際にちょこんと坐するこの瓶を見ると、小さなお社かお札でも見ているような、そんな気になる瓶である。

果たして、次の八角神薬はいつ来るだろうか?